『魂を撮ろう』
先週、僕が読んだのは『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』。
著者の石井妙子さんのお名前は著書の『原節子の真実』『女帝 小池百合子』で聞き及んでいたものの、読んだのは初めて。
写真家ユージン・スミス、その妻で彼とともに水俣病患者やその家族を撮影したアイリーン・美緒子・スミス。2人が奇縁によって水俣に導かれていくまでの歩みもかなりドラマチックだけど、僕が圧倒されたのは、水俣病被害者の動きだった。
水俣病については、僕が小学生のころに教科書でその凄惨さを知ったが、加害企業や地域・国がどのように賠償したのかを学ぶことはなかった(と思う)。
感染症ではなく有機水銀中毒による公害と確認されるまでも、患者たちがものすごい差別を受け、水俣病患者に認定後も加害企業からあまりにも不誠実な扱いをされる。
企業や国家に持っていた信頼が崩壊し、長い長い闘争へ繋がる様子が悲しくて仕方なかった。
水俣病の経緯が詳細に描写され、僕はかなり衝撃を受けた。
国や大企業が、市民を守る親心がないどころか繰り返し無情な対応を取り続ける。
これは今もなお、さまざまな社会問題にも同じようなことが起こり続けている。寂しさ虚しさの残る読後感なんだよ。
だけどまだ、僕は国や企業に対して信じているところが大きい。
それは僕の職業上の大前提だということもあるけれど、単に僕が甘い人間だからかもしれない。
あまり他人を信用するな、ということを言われることがあるんだよね。
石井妙子さんの文章が上手で、対象から適度な距離感を取っているのが読みやすくて良かったです。
思想強めのノンフィクションって苦手なんだよなー。
今度は母にも読ませようと思ってる。