母は『てのひらの闇』を読んだ
母は『てのひらの闇』も面白かったそうで、あっという間に読み終わった。
ぼくの好きな作家を、母も好きになってくれて嬉しい。
深夜に目が覚めてしまったことがあったそうで、読書していればまた眠たくなるだろうと『てのひらの闇』を手に取ったものの、面白いので目が冴えてしまい結局早朝まで読んでしまったそうだ。
「物語も面白いが引き込まれる文章だ」
というのが母の藤原伊織評だ。
返す返すも早世したのが残念だ。
母は藤原氏が物故されたことを知らなかったので、やはり新作が出ないことを残念だと言っていた。
彼ががんに罹ったことを発表した当時、週刊誌(週刊朝日だったような気がする)で、社会保険事務所(当時)との攻防をしたためたエッセイが忘れられない。
国民年金保険料を滞納していた藤原氏に、社会保険事務所から督促の電話がかかってきた話だ。「がんに罹って余命も少ないのに老後のための年金保険料を納めろというのか!」と怒りが伝わってくる文面だった。
ぼくは藤原氏の気持ちはごもっともだと思いつつも、督促の電話をかける社会保険事務所の人も大変だなぁと同情してしまい、なんとも複雑な気持ちになった。
だからきっと印象に深く残ったのだろうけれど。
ぼくはどちらかと言えば年金保険料はきっちり納めたいタイプの人間だ。学生時代に滞納してしまった分は時効でもう納められないので、満額(40年分)納めたいから60歳を過ぎたら任意加入という制度を利用したいと思っている。
あの世の藤原氏から見たら、鼻で笑われそうだけどね。