母(80)と僕の読書の記録とその周辺

母は小説が好き、僕はノンフィクションが好き

『女帝 小池百合子』

ぼくが年末年始に読んでいたのは、石井妙子『女帝 小池百合子』。

 

同じ著者の『魂を撮ろう』が面白かったこともあるので読んでみたけど、著書や事実から追いかけるオーソドックスなノンフィクションの手法をとりながら、いつまで経っても小池百合子の実像が掴めなくて、寒気立つ内容だなぁと思いました。

取材の過程で、100人以上の関係者から証言を得たのだそうだけど、何人もが小池のことを「嘘つき」って言っているし、小池自身も過去の事実を「知りません」「言ってません」と取り消そうとしたり改ざんする動きを見せているんですよね。

もっとも特徴的で広く知られているのは『カイロ大学卒業』の真偽だけど、本書の「終章小池百合子という深淵」が畳み掛けるようですごかったな。厚くて黒い壁に閉ざされてしまうんだよね。

ミステリー小説として読むならありきたりな展開ながらも面白かったで済むんだけど、これノンフィクションなんだよな、って思うと内容に不満を感じてしまうなぁ。

 

全編が小池に対する批判で染まっているのは、ノンフィクション好きとしては辛かった。もともと小池に興味がなかった著者が、1冊の本を上梓するだけのボリュームや熱量を出すために、批判がちになるのは理解できるが、ネガティブな証言ばかり取り上げていて暴露本と大差なく感じてしまう。

さらには、小池の実像に迫るため、側近の不可解な異動や同居男性の謎めいた不動産取引まで書いておきながら、顛末を追いかけきれてないのも、「なんでこのエピソード書いた?」と思ってしまったねぇ。

もしかして、そっち方面も闇が深かったから、せめてヒントだけでも出しておこうって感じなのかな。

 

そういう不満もあるせいか、内容にフィクションが混じっているような印象が残ってしまった本でした。

でもこれだけ小池を嘘つきとか物語を演出しているとか連呼していたその内容がフィクション混じりだったら、それは著者への信頼を無くすでしょうし、虚飾は無いと思いたい……。