『灼熱』
しばらく前にTwitterで話題になっていたので手に取った一冊。
本の厚さに尻込みしていたけれど、とくに中盤以降の展開に目が離せなくなって通勤電車でも読んでしまった! 傑作!
物語は、戦前ブラジルへ移住した日本人たちが、日本からの援助や情報の途絶によって「日本が第二次世界大戦に勝った」と信じる派閥と「敗戦の事実を日本人コミュニティに広く知らしめよう」と考える派閥に分断され、やがて凄惨な抗争へつながっていく。
そういった史実も非常に興味深いけれど、キャラクターの個性の強さにぼくは魅了された。二人の主人公、勇とトキオの心情が非常に丁寧に書かれているので、分厚いページ数も脱落することなく読み切れたし、弥栄村の面々もかなりキャラが立っている。
読んでいてアニメの情景が思い浮かんだけれど、それは登場人物のキャラクターによるのだろう。
ぼくは、面白い物語にはキャラクターの個性の強さは不可欠と考えているのだけれど、「主人公の家族」「主人公の友だち」など周囲の人々についてこんなに書ける作者には久しぶりに出会ったなぁという感想をもった。
初めて読んだ葉真中顕作品だったけれど、他の作品にも手を出したいな。
↓ここから下は少しネタバレが入ります。
1つだけ、「伏線か!?」と思っていたのに肩透かしをくったシーンがありまして……。
少年時代のトキオが勇に股間を熱くしていたシーンだよ!
トキオは大人になっても童貞のままなのに「勇が好き」とは最後まで自覚せずに生涯を閉じるなんて!
ぜったいどこかで伏線回収があると思ってたのに~~美味しすぎ設定なんだけどなぁ。