『BASTARD!! EXHIBITION!!』へ行く(2022.07.17)
ぼくが小学生のとき連載開始し、頻繁なる休載のため未だに完結していないマンガ『BASTARD!!』が原画展を開催するとのことで行ってきた。
ぼくは連載当初は熱烈なるファンで、コミックス1巻が発売される日、入手後の恍惚とした嬉しさは30年以上たった今でも思い出すことができる。
「ぼくのために描かれた、ぼくだけのマンガだ!」というくらいハマっていたし、大きくなったら作者の萩原一至先生の弟子にしてほしいとも考えていた。
だけど、時間が経過するに連れ、BASTARD!!という物語がぼくから離れていった。ぼくだけのマンガではなくなったのだ。
とはいえ、『BASTARD!!』と聞くとやっぱり胸に甘酸っぱいものが広がるなぁ...…。
タワーレコード渋谷店8階が会場だった。
エレベーターの場所がわからず、エスカレーターで7階まで上がると8階へはエレベーターでと書かれている。エレベーターよりも階段を先に見つけると、その壁には8人のキャラクターポスターが掲示されていた。
まるでキャラクターが出迎えてくれているようで、わくわくする気持ちが一気に高まった。もうぼくは『BASTARD!!』に出会ったときの子どもに戻っていた。
特にカル=スのポスターが眼を引いた。
展示内容はアナログで描かれた生原稿や、カラーイラスト、デジタル作画も美しく出力され、どれも美しく魅了された。
ぼくが印象に残ったのは、80年代・90年代、そして2000年代以降と萩原先生の絵柄の変遷だった。
それぞれの時代を象徴する絵柄である。
『BASTARD!!』にはパロディやオマージュが多く取り込まれているが、萩原先生はその時代のトップクラスのクリエイターたちとも交流し、彼らの技法や絵柄を取り入れ反映していた。
それがそのまま、「時代」として表れている。
萩原先生と『BASTARD!!』は時代と寝ている。
流行を物語や絵柄に反映させるメリットは、人気にブーストがかかることじゃないだろうか。ただし、時間が経過してから眺めると、「時代遅れ」を感じざるを得ない。
令和に『BASTARD!!』を眺めたとき、当時の熱い思い出と一緒に色あせた寂しさも湧き出してしまったのだ。かつて行列の絶えなかった人気店がいまや閑古鳥がなく様を目の当たりにしてしまったような。
ただ、この『BASTARD!! EXHIBITION!!』には来場客が程よく訪れていた。閑古鳥はいなかった。皆、原画に顔を近づけたり、スマホでの撮影に熱心になっていた。それぞれの『BASTARD!!』への思いを抱いているんだろう。
ぼくも冷めた思い出だったはずの『BASTARD!!』だったが、会場にいる間にいつしか温められていたようだ。スマホで何枚も撮影していた。
ネトフリで再アニメ化されたので、会場でも壁一面の巨大スクリーンでPVを流していた。その声や主題歌が原作の原稿を眺めるぼくを、『BASTARD!!』の世界へ連れて行った。
それで、休載続きの『BASTARD!!』だが、果たして物語は完結するのだろうか。
その答えは会場に掲示されていた萩原一至先生からの『ごあいさつ』に一文がある。
作品は未だ完結しておりませんが、いつの日か続きをお届けできるように日々奮闘しております。
最後のコミックスが出てから10年以上『BASTARD!!』は描かれていないのだ。きっとネームを描くのも難しいに違いない。
あんまり期待しないで、でも萩原一至先生の言葉を信じて待っていてもいいかな、という気持ちになって会場をあとにした。