『原節子の真実』
表紙の写真を見ただけで、母は「原節子!」と分かったのだから、当時はずいぶん活躍されたのだろうなぁ。ぼくにとってはお名前を知る程度だったけれど。
そのお名前さえ、「引退後は文字通り表に出ることのない謎めいた女優」として覚えていたのだ。隠れているものにより惹かれるのが人間の性ではないでしょうか。ぼくは、自分にその品性下劣な性格を自覚して、しかしその欲望に逆らうことなく、ノンフィクションを読んでいる。
はっきりしたお顔立ちだけでなく、思ったことを率直に口にするのも現代人っぽい。だから封建的な映画界では長らく異端に扱われてきたのだろう。長い間「大根女優」と叩かれてきたことも、この本を読んで初めて知った。
周囲の環境に翻弄され、節子の意志や自立心はそれに逆らおうとするも、結局は大きなうねりに飲み込まれていくもどかしさを感じながら読みました。
評伝自体は面白く読んだのだけれど、読み終えてみると、書き方のせいなのか「著者の想像なのでは?」と疑念が浮かんだ箇所もいくつかある。
でもこういうのってノンフィクションが陥りやすい罠かもしれんね。他のノンフィクションとかルポでもこんな違和感を感じることがあるもの。